特別企画
日本青年社の目的とその活動を語る座談会(2)
【座談会出席者】
●杉山 洋 会長補佐 ●加藤順一 副会長
●亀田晋司 副会長 ●大久保叡 統括長
●富施光治 総務局長 ●篠塚栄一 行動隊長
平成11年に右翼民族派改革元年・新たなる民族運動の構築をスローガンに掲げて意識改革と体質改善を図った日本青年社。五十有余年にわたって民族運動に携わってきた以降の日々の活動と存在が大きく変化する中で、前号に引き続き、特別企画・「日本青年社の目的とその活動を語る」座談会の記事を掲載します。今回は、農業問題とTPPです。
農業問題とTPP
【司会】 前回、日本青年社は変貌する社会環境の中で意識改革と体質改善を図りながら、どのように方向転換を図ってきたか。そして平成21年のロシア訪問と北方領土問題から農業問題に入ったところで終りました。農業問題と言うとどうしてもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の問題が大きく関わってきます。このTPPは将来的にAPEC参加国が目指しているFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)に発展させることを目標にしているわけですが、昨年11月EAS(東アジアサミット)を見ても日本の将来に大変重要なことだと思いますのでTPP参加に賛成の日本青年社は現在の日本の農業の実態とTPPについてどのように考えていますか。
【加藤】 TPPについては、昨年11月にハワイで開かれたAPEC首脳会議で日本は参加を表明しました。しかし日本では与野党ともに政治が未熟と言うか国際感覚が乏しさを露呈するような状況でした。大まかに見ると賛成の経済界と反対の農業界の騒ぎばかりが特出していました。これも反対を叫ぶ政治家の言動は党利党略に満ち満ちていたし、そうでない反対意見の人たちも感情論が先行しているようでようで正に「木を見て森を見ず」といった感が否めませんでしたね。然し現実問題として産業界の輸出のパーセンテージで見ても、日本はTPPに参加することは必要だし農業についてもこれからの食糧安保を確かなものにするためにもTPPの舞台で日本の立場を堂々と主張しながらFTAAPに向けた他国間との協議を進めていくことが重要ではないか思います。例えば日本とベトナムと言うように東南アジア諸国との協議ですけど。
【杉山】 TPP参加国の中で大きい国は日本とアメリカぐらいなのに反対する人たちはアメリカに利用されるだけじゃないのかと言うんだけどそれは余りにも短絡過ぎると思うね。
【加藤】 そうですよ。日本はTPPに参加して環太平洋諸国と連帯した経済を軸として将来的にはFTAAPの機能を現実かさせる方向に進めていくことが大切でしょう。そういう意味から言っても昨年11月のTPP参加は当たり前のことですよ。交渉はそこから始まるんですから。
【杉山】 そうだね。日本の将来を考えたときも色々な分野においてTPPに参加したことは賢明だと思うね。でも今日の座談会は農業問題がテーマになっているから農業を中心に進めていくけど、このTPPで日本の農業がつぶれるというような意見もあるし農業団体もそのことで反対しているということも事実だと思いますが、日本の農業の一番大きい問題は、農業従事者の平均年齢が65歳を上回てるということです。すでに68歳、70歳と言う人たちが年を追うごとにどんどん増えていって実質的農業ができないような状態が生まれ始めているということだと思います。だからこれからの農業は若い人たちが取り組めるような制度や環境を整えていかなければ日本の農業そのものがつぶれてしまうと言う問題を抜きにしては語れないね。いわゆる今までのような保護的な感覚で農業を維持するというのは日本の未来にとって非常にマイナスではないかと思いますね。それとTPPの問題は日本の色々な産業の輸出と輸入という問題が絡み合ってくると思うけど、ついこの間も円高という問題が日本に大きな打撃が与えました。これは日本という国は輸出に対する影響が大きいということを示してる。円安になれば輸出は難しくなってくるわけだから日本に大きなダメージを与えるということは当然のことなんだけど、それは日本が輸出をして生きているということを逆に示した証になると思います。そういう意味においても日本の経済やその他の問題も含めて基本的には日本が輸出国であるということを物語ってると思うね。そのことを考えてくるとどうしても日本の将来と言うものは、自由貿易を推進する側に立たなければならないということは確かだと思います。こういう観点に立てばTPPに反対と言うのはほとんどないと思うし、TPPに反対する人たちも自由貿易そのものに反対することはないと思いますね。また農業界は農業問題で非常にダメージを受けてしまうのではないかということから反対運動が起ってると思うけど、だからこそこの問題をどういうふうに解決してどうして行くのかと言うことを考えていかなければならないと私はとらえています。
【富施】 そうするとTPPは今までの日本の農業のあり方を改善していくためにこれからは日本も自由貿易圏の中で新しい農業体系を見直していく。要するにTPP参加は日本の未来を展望した農業を考える絶好の機会を迎えたてると言えるんじゃないですか。
【司会】 それと農業問題はどうしても食糧安保と密接な関係があるわけです。そして経済問題ですがこれも関税が撤廃されるわけだから海外から入ってくる物品が安くなるとわけですが、そこにも今後の日本の農業が絡んでくると思います。その辺のところはどうなんですか。
【加藤】 まず農業についてですが、現状のままで食糧自給率が向上させるというのは今の段階では難しいと思います。またTPPにある保険制度などについても日本とアメリカとでは根本的に政策が違うわけだし、他の先進国や環太平洋諸国なども違うわけですが、医療制度で国民全てが保険に入れる制度でないのはアメリカぐらいじゃないですか。農業問題なども日本の農業が衰退するという声を聞きますが、日本人は結構しっかりしてますよ。例えば中国から入ってくる食品は農薬を使ってるから危ないとか、アメリカから入ってくる大豆などは遺伝子組換えをしているから食べるなとか。特に日本の主婦層は買い物するときに原産国の表示を細かく見ながら買ってるんです。ですから日本国民は輸入品は安いから国産品は買わないというような安易な感覚はもってないと私は思います。
農業を衰退させたのは農協と農業団体
【大久保】 昨年はTPP参加の賛否がクローズアップされたけど、私は日本の農業は根本的に見直さなければならないと思います。農業事態ではなくて農業に携わっている農家がどういう立場におかれていて、どういう構造の中にいるかということも考え直さなければいけないんじゃないかと思いますね。それはこれだけ流通が発達しているのに農業従事者も会社法人を作って農業をやっているところも自分で生産した農産物を直接販売すれば儲かるが、いわゆる三ちゃん農業をやっているところは農協を通さなければならない。そうするとどうしても赤字になってしまうんです。なぜ農協を通すと赤字になるのかというと農協が発足した当時は互助会的な意味合いがあったんですが今はまったく違うものに変わってしまったからです。だから農業や自給率の問題は先ずそのことから考えるべきだと思います。これは語弊があるかもしれないけれど農協は何しろ農家を締め付けている。農業団体は政治を動かす勢力になっている。そうすると農家が儲かるんじゃなくて農協が儲かるが逆に農業は衰退していく。私はいまの農業界はこういう構図になっているのではないかと思ってます。
【亀田】 そういう話は栃木県に行ったときに農家の人が、農家は農協から肥料や除草剤や農薬などを買っている。生活用品なんかもそうだがその年の農業が不作であろうと何だろうと、そんなことはお構いなしに農協は預金から引き落としてしまうので金が足りなくなれば借金が増えてしまうと嘆いていたことを覚えてます。
【大久保】 そうなんです。農協は農家を擁護するのもではなく、農協自体が営利を追求する組織の変わってしまったから農業や自給率を考えるには先ず農協のあり方を考えなければならないと思うんです。そして今の農協や農業団体は圧力団体に変わってきています。そういうことを知らない人たちは農協や農業団体は農家を保護するための圧力団体だと思っているかも知れないけど、逆に農家をいじめる団体になっていることに目を向けないと結果的に農協は儲るけど農家は儲からない。今亀田さんが言ったように、ホームセンターで買えば100円の物を農協から150円で買ってしまう。それも現金でなくていいから買ってしまう。機械も農業機具会社から買えば安いけど農協から買わなければならない。そうすると私が住んでいる山梨県のように、葡萄は日本一番の生産県だというけれどほとんどの農家は年間平均200万円からの赤字が出てしまうんです。しかし個人農家でも流通経路などを持っているところは儲かるが他は儲からないと言うことになるので私は今の農協や農業団体のあり方から考えていかないと農業は衰退していってしまう。そうするとそれが自給率の問題につながってくるんじゃないかな。だからこれからの農業は根本的な原因を追究していかなければいけないと思うんですけどね。
【篠塚】 今の話しを聞いているとTPPに反対する勢力である農協や農業団体などが自分たちの既得権益を守るために農家を煽ってると言えますね。
【富施】 それと国会議員ですよ。国会議員も自分が選挙で当選するために農家や農業団体の票が欲しいから、いかにも農家に味方しているようなゼスチャーで反対の声をあげている人も結構いると思うんですが、これをマスコミが過大に報道するから農家も国民も実際のところがどこにあるのか判断がつかなくなってしまうんですね。特にマスコミは影響力が大きいですから。
【大久保】 そうなんです。ですから私はそれ以前に日本の農家がおかれている立場をもっと理解することが大事であって、そういうことを怠っている政治家がTPPに賛成とか反対とか言うのは本当におかしいと言いたいんです。
【杉山】 今必要なのは先ず農業の改善と体質の強化だね。
【大久保】 そうです。だから農家が高齢化して65歳以上になっても後を継ぐ人が出てこないんです。これでは農家がいくら頑張っても儲からない農業ではどんどん離れていってしまいますよ。
【司会】 それと前回の会議で農業の株式化という話しが出ていましたが。
【大久保】 山梨でもいくつかの土建業者が別法人を作って農業に参入しているけれど、そういうところは最初から利益を追求していくので独自の販路を確立してるんですが、年寄りが二人でやっているような三ちゃん農業といわれる小さな農家はそういうことができない。今は流通経路というのは難しいものではなくて簡単にできるんですよね。だから、そういうことも考えながら農家も農業のおかれている現状を変えていかなければいけない。
【司会】 流通経路が簡単にできるというのは農家も努力しなければいけないということですか。
【大久保】 それは農家も努力しなければいけないとは思うけど現実には努力しようがない。努力しても努力してもむくわれないというのが今の農家がおかれている立場ですから。そのことも解決しなければいけないと思います。そして農業団体が政府に圧力をかけるから農家が田んぼを休耕田にすると金が貰える。でも農家というのは本当は農業をやりたいわけですから若い人たちが興味を持つことのできる農業環境を作ることが一番大切なんですけど政治家も官僚も農業の根本的なことを考えるんではなくて、自分たちの都合のいいような目先のことだけを取り上げて議論してる。そうじゃなくて根本的に構造を変えていかなければいけないんじゃないかと思う。
日本の農業を守るためにもTPPは必要
【司会】 日本にとって農業も米も国家の生命線だと思いますが現実にはその生産農家がひどい状況下にあるんですね。
【大久保】 それとこれからの農業の全体を見たときも日本は資源が少ないのに自給率が低いからどうしても輸入に頼らなければならないけど、これからは輸出も視野に入れた農産物の生産に力を入れていくことも必要だと思いますね。そのためにもTPPに参加して自由貿易圏に門戸を開くべきだと思います。
【加藤】 そうですね。自給率にしても先ほどから言ってるように30パーセント代しかないわけだから実質的に他国に頼っているのが現実なのに、反対派がいくら綺麗ごとを言ったってグローバル化している時代に日本だけが保護主義で国民の食料安保を守ることもできないのだから、日本はTPPでイニチアシブがとるような努力をすべきだし、それが無理であっても自由貿易圏諸国と協力関係を築いていく方向性が必要だと思います。農業の底辺にある根本的なことを今までの政治家や官僚が先送りにしてきたからこういう問題が出てきているとも言えるんじゃないですか。それと産業界だけが特出して世界に出て行っても、農業界が世界に門戸を開かなければ、産業界は円高と第三の勢力といわれる特定の海外製品に押されて結構厳しい状況になるかも知れませんね。いずれにしても日本経済は農業と産業が両輪の形でなければいけませんね。
【篠塚】 TPPのメリット、デメリットというのも大きな問題だと思うんですがメリットは何ですか。
【杉山】 そのことについてだけど、今までの歴史の中で日本は徳川時代に鎖国をやってたね、鎖国だってメリットもデメリットもあったんです。でも基本的に鎖国政策で栄えた国は近代社会ではないはずですよ。 TPPに反対と言う人たちが日本は鎖国しろということではないとは思うけれど、もしこの人たちも日本の農業を真剣に考えているなら日本が国を開いていくという方向性を間違えてはならないと思う。理屈を言ったところで日本の生産力の輸出は15パーセントに過ぎないんだよね。中にはそのために農業を犠牲にするのかというような意見があるようだけど私はそうは思わない。輸出をもっと伸ばす方向にしか日本の生きる道はないと思うね。
日本は門戸を開いて「共助」お互いに助け合うという精神でそれぞれの国が付き合っていかなければならないと思う。特に農業については、つぶれてしまうんだという意識がないと立て直せないと思うし、農業を儲かる産業として再構築していかないと自給率なんていうのは伸びっこない。もっと大きいことを言うならば日本の農業は世界を救うんだというぐらいの気構えがもてる農業に転換しなければならないけど日本はできると思う。
その一例として平成5年頃だったと思うが米が不作でなくなっちゃったことがあるよね。そのとき政府はタイ米を緊急輸入したんだが、日本ではいくら米がなくてもほとんどの人はタイ米を買わなかった。安かったけど買わなかったんだね。今では海外でも結構優秀な米ができるらしいけど日本人はただ安いから買うというという国民性じゃないと思う。逆に日本は果物とかの農作物とかを世界に輸出できるような農業の優秀さがあると思うんでね。そういう物の輸出をどんどん伸ばしていくことができると思う。
それと世界では凄い勢いで人口増加の問題が起っていて、昨年の11月1日には世界人口が70億人になった。たった50年で倍になったんだね。当然のこととして食糧も今の倍が必要になるわけですよ。これがあと50年を今のペースで進んでいったらまた倍になってしまう。おそらく100億を超えてしまうことが確実なんだね。そうすると現在の生産ペースでは世界中の食糧が足りなくなることは目に見えてます。こういう問題をどうするかと言うことも日本の農業を考える上で非常に重要なことではないのかな。
日本は自国民だけを食わすだけじゃなくて世界中の人間を食わせるような農業を率先してやっていくような方向性をもたなければならないわけですよ。儲からない農業では若者が農業を見捨ててしまう。だから何とかして日本の農業を儲かるように方向転換をしようと、その方向転換の仕方については猫のヒタイのような農地をいくら耕しても利益がでないことは誰が見ても判ることだから、最低限の方向性としてある程度大規模な農地も必要になる。これは農地を集約するような政治の方向性がなかったらできないと思うんです。だから農地を集約して本格的に機械化して大型機械をいれるような農業もやっていかないと太刀打ちできないと思うね。だけど農業をそういう方向にリードしていくような政治が存在しないと無理ではないかと思うけどね。
【司会】 ということは現在の日本の閉鎖的な農業を打開するためにもTPPで世界に門戸を開いて優秀な日本の農産物を輸出していくことも考えていかなければならないということですね。
【杉山】 当然のことですよ。
日本の農産物を世界的ブランドに
【加藤】 今の話ですが日本の安全基準や安全対策は世界有数の厳しさがあるわけですから、日本の農産物をブランド化して海外への輸出を増やしていくことも重要ですね。
【杉山】 そうですね。日本の食の安全基準が厳しいということは世界が知っているからね。
【加藤】 そういうことを日本の国自体が国益の一環として、関係省庁が日本ブランドを宣伝しながら進めていくという戦略が必要になってきます。
【富施】 そうすれば輸出も増えるし今後の農業も経済も活性化を図れるということですね。
【亀田】 そして産業界は得た利益の中から農業支援すればいいんですよね。
【篠塚】 日本の政治もそういう前向きな政策を考えればいいのに政治家も官僚も自己保身と既得権益ばかりを守ろうとするから農業政策の問題点も改善してこなかったけど、TPPによって新しい政策を打ち出すことができれば、これは大きなメリットと言うことになりますよね。
日本の農業とアメリカの農業
【大久保】 確かに日本はTPPによって開かれた自由貿易圏に参加してこれからは世界に門戸を開かなければいけないと思うけど、日本の農業を機械化したり大型化するといっても国土の80パーセント近くが森林であって傾斜地も多いんです。その傾斜地の田んぼは棚田になってるし、あとの20パーセントも住宅や工場があるのが現実です。そうすると農地と言うのは限られてしまうわけです。アメリカあたりの農業の規模は日本の1件の農家の100倍もある。こういうことを考えると日本の農業を機械化したり大型化するといっても限度があるし農産物の品質を向上させるといっても今では日本のコシヒカリと同じようなレベルのものがカリフォルニアでも作れるのだから、関税が撤廃されると価格がさがることも考えながら現実を直視して他の方法を考えるべきだと思うけどね。
【杉山】 そういう意見もあるけど米だけの問題に限って言えば、今国内でできる大型農業の単価というのは実はアメリカの米の単価に迫っていて大差なくなってるんだね。では日本の米がなぜ高いかというと、日本はいわゆる三ちゃん農業を優先して大きな田んぼを全部休耕田にしてるんだね。要するに日本は農業米についてほとんど全部といっていいほど肝心なことを避けているので安くなる米を作らさない。これが進んでいるために今の日本の米作りはものすごく行き詰ってきている。日本が本気になって自由に米を作らせたら価格的にもアメリカと対等できるといっている人もいますね。そう意味でいったら日本の米は政策で高くしていると思えるね。
【大久保】 勿論そうですよ。日本は政策で米の価格を吊り上げてる。だから農家は儲からない。儲からないのに高い米を作ってる。そんなバカみたいな話をいつまでも続けていいのかと思いますね。農家にもっと自由に米を作らせればいいと思います。それと、田んぼと言うのは昔は米を作ったら冬場は二毛作といって麦を作ったりしていたんです。
【加藤】 でも今までの話だと農業は人手も足りないし利益にならないから農家もやらないんじゃないの。小麦なんかもカリフォルニアからどんどん入ってくるから。
【杉山】 そういう意味からいくと米は太刀打ちできる見込みはあるけど小麦は難しいかもしれない。
【大久保】 小麦は100パーセント近くが輸入だから、稲刈りが終った田んぼで麦を作るというような二毛作はできなくなったと思うけど、他の有効な利用方法を考える必要があるんですよ。
【杉山】 私は以前に食糧事情のことを機関紙に書いたけど、アメリカで小麦を作ってる農業というのはロッキー山脈の東の方らしいんだね。アメリカも海沿いは結構人が住んでるけど膨大な農地がある中部あたりになるとあまり人が住んでないのでほとんどが農業で小麦なんかを作ってるんだけど実は大きな問題も起きてる。どういうことが起きてるかと言うと、何百万年という長い年月をかけてアメリカの大地が蓄えてきた水が、この10年か20年の間にほとんど農地に吸い上げられちゃったんですよ。それで仕方がないから井戸を掘って電気で水を撒いて作物を作ってる。その水位がどんどん下がってしまって塩害まで起きてる。水に塩が混じってるわけですよ。それでも井戸で水を吸い出すんだけど8メートルとか10メートルとか言う単位で水位が下がるから農作物が作れなくなって最近は耕作放棄をしているところが多いというんだね。
アメリカの畑は飛行機で上から見みると丸い形をしてるよね。なぜ丸いかと言うととてつもない大きな散水車が一日かけて畑に水を撒きながら一周してる。その水はどこから来るのかというと畑の真ん中の井戸から吸い上げ全面的に撒いて小麦を育てるんだけど、その散水のやり方自体が頭打ちになってる。だからこれから爆発的人口増加とともに生産量を増やさなければならないんだけど、それに対応できるような小麦の生産はアメリカでも将来的に難しくなってくると思うね。だけど日本にはまだまだ米の未来があると思う。それは日本にはまだ水があるということですよ。もともと農産物というのは実は言い換えると水なんだね。日本は穀物を世界中から輸入してるけど、これは言い換えれば世界中から水を輸入しているようなものなんです。しかし現実には世界中で水が不足してるんだから、日本は水が不足しているところから農作物に名を変えてどんどん輸入してるということになるわけですよ。
日本には十分な水があるんだから今度はこの水を農産物にして逆に輸出していけば日本の農業の未来があるんじゃないかと私は思うね。
【篠塚】 面白いというか物凄い発想ですね。