平成16年11月02日
◎日本固有の領土・「尖閣諸島」に対する侵害を許すな!
2004年3月24日早朝、日本の固有領土である尖閣諸島に、中国人七人が上陸するという事件が発生した。彼らは十数時間日本の島に不法滞在し続け、沖縄県警は、同日の午後七時九分に彼ら全員を逮捕した。しかし二十六日夜、日本側は同事件を立件することなく七人全員を中国に送還した。
周知のように中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは1970年12月である。国連アジア極東委員会【ECAFE】が1968年に東シナ海の海洋調査を実施し、1969年その大陸棚に石油が埋蔵されていると発表した。その発表を機に、それまで日本の領有を認めていた中国が変貌したのである。
1992年2月、中国は領海法という国内法を可決し、尖閣諸島も西沙諸島も全て中国領であるとした。さらに、1996年には、日中両国が国連海洋法条約の批准を決めたが、日中双方の海域に関する考えは大きく開いたままである。国連海洋法条約は200海里まで排他的経済水域【EEZ】と定めているが、両国間の海が400海里にみたないため、日本側は日中の中間線を境界線と考え、中国側は、中国大陸の延長にある大陸棚にそって350海里までが中国のEEZだとする大陸棚説をとった。大陸棚は沖縄の少し手前の沖縄トラフで大きく切れているので、そこまでが中国の海であり、その中に尖閣諸島も含まれていると主張している。
資源獲得のため歴史的事実を無視する中国に対抗して日本政府は今日まで、日中を隔てる海をどう.区分するのかについて国益をかけた議論してきた。しかし今年に入り、東シナ海の日中の中間線から中国側に5キロメートル入ったところに、中国が春暁ガス田群(5つの鉱区から成る天然ガス採掘施設)を建造し始めたという事実が明らかになった。『東京新聞』と杏林大学教授の取材によれば、中国は1998年末までに、日中の中間線から中国側70キロメートルのところに平湖油田の石油採掘施設とパイプラインを完成させ、そこで採掘された石油と天然ガスは、今上海に送られているが、春暁の施設は、現場の写真から読み取ると、井戸は恐らく15本、それら全体を調節する大きな司令塔が出来るのではないか。そして、ここからの石油と天然ガスは、杭州湾にある寧波に海底パイプランで送られる。寧波には中国海軍の東海艦隊司令部がある。
日本政府は、中間線のすぐそばに採掘施設を作り、日本側の海底に眠る資源も吸い上げてしまうかのような中国のやり方に抗議したが、言葉による抗議が通用する相手ではないことは、これまでの経験から明らかである。それどころか、日本側が求めた海底資源に関する情報も中国側は出してこない。そこで日本政府は、7月7日にようやくノルウェーの調査船を雇い東シナ海の資源調査を開始するに至った。
不法上陸されても、ひらすら穏便を旨として七人の犯人を単に中国に送還するにとどめ、中国側が石油・ガスの採掘施設の組立を開始し始めて初めて調査船を出す泥縄の対応は、東シナ海が紛れもなく中国の海になりつつあるとこを示している。
◎糾弾できない日本政府に対し、中国政府に強い姿勢を要求する!
自民党は中国側の動きに危機感を強め、今年春先から「海洋権益に関するワーキングチーム」【WT】を結成、武 見敬三参議院議員を座長とし高村正彦氏、中谷元氏ら25名が名を連ねた。海洋資源に関する対中国外交の実態を調べた武見氏は、戦
略以前に、東シナ海の日本側の海底資源の調査結果すら共有されていないという、とんでもない縦割行政だとの驚きを語った。実は、資源エネルギー庁が中心となり、1996年から99年にかけて二次元の物理探査が行われた。資
源開発にすすむにはさらに資源の埋蔵場所をピンポイントで特定する三次元調査が必要で、試掘はそのあとの話である。最も基本的な二次元調査の情報が縦割行政の弊害として外務省に渡っていなかった。外務省中国課は、今年3月、武見氏らによって指摘されるまで、交渉の重要な要素ともなる資源エネルギー庁の情報を入手していなかったのである。
なぜ情報は伝わらなかったのか。資源エネルギー庁側は、この調査が外務省の合意なしに行われる可能性はないこと、外務省も同調査の実施を承知しており、外務省が求めた場合、情報が提供されないことは考えにくいため、外務省側が情報を求めなかったのではないかと推測できる。
外務省中国課には、資源に関する情報のみならず、中国との間で摩擦を生じさせたり、交渉を必要としたりする情報を遠ざける傾向があるのではないだろうか。情報を知ったばかりに中国に抗議しなければならなくなるような、そんな気の重い仕事をしなくてもすむように、自分たち役人にとって悪い情報は知りたくないという外務省内部の雰囲気があるのではないか。たとえば、中国艦船による違反行為は公表されるが事前通報した上で行う調査活動は、外務省は公表したがらない。違反でなくとも、どれだけ繁盛かつ広大な日本側海域で中国艦船が調査活動を展開しているかを、日本側が中国側の海域にわずかでも入り込まないように気を使っていることに対比して、国民にしらせることも重要である。
◎国境を守ることは国の生命線だ!
2004年6月15日、前出ののWTは、「海洋権益を守るための九つの提言」を行った。(1)自衛隊の能力強化、(2)日米安保の活用、(3)日本側海域での試掘の実施など、極めてスジの通った内容であり、その筆頭が海洋権益関係閣僚会議の設置である。武見氏によれば、「海洋権益は領土及び安全補償問題と密接に結びついた複雑な問題です。しかし日本には海洋戦略の基本方針も枠組みもない。・・・(中略)・・・。ここには最も重要な外交と安全保障が入っていない・・・(中略)・・・。だからこそ、官房長官を頂点にして、閣僚を据えて、政治の責任と力で、正面突破していくような強力な体制が必要なのです。」
関係閤僚会議の設置は即、日本の海洋資源を守り抜くという日本政府の決意表明になる。中国に侮られないだけの決意表明こそが、今緊急に必要なのである。
現代史を遡れば、日中両国は、国柄、国家目標を含め、およそ全てにおいて正反対である。敗戦後、日本が憲法九一条をいとも容易に受け入れ武力を放棄したのに村し、中国は、1949年の建国時に毛沢東国家主席が核大国になることを国家戦略の基礎とし、50年代には100万人の兵士を朝鮮戦争に投入。54年から55年まで、さらには58年に台湾海峡で国民党軍と戦った。59年にはチベット動乱、62年にはインドと国境で戦った。
その間、日本は経済成長を目指し、64年にはアジア初のオリンピック開催に沸いた。その年、中国は核実験に成功し、69年には旧ソ連と国境で戦った。70年に日本は万博のお祭り騒ぎのなかにあったが、中国はミサイル発射実験に成功、米軍基地も含めて日本の全土を射程内におさめた。
振り返れば、第二次世界大戦後、中国はほぼ一貫して武力を国家の軸とし、かつ領土領海拡張のための戦いを持続してきたことが明らかだ。対照的に日本は北方領土も竹島も失っている。そして尖閣諸島も、危うい状態である。EEZを200海里と定める国際海洋法に基づけば、日本の海域は世界六位の広さである。この広大な海こそは資源の宝庫であり、二十一世紀の日本を支える原動力となる。にもかかわらず、日本政府にも、国民にも、海洋権益への関心も執着も極めて希薄である。
断固国家として決断し、広大な海洋権益の守りに今こそ乗り出す時である。日本は米国を支持する立場から自衛隊をイラクに派遣中だが、しかし、イラクよりもっと近くの、日本の領海とEEZが今、中国に脅かされているのだ。自衛隊のイラク派遣に関して国民を説得しようとした小泉首相や石破防衛庁長官は、なぜ眼前の日本の海の国益について沈黙を守るのか。日本政府としてはっきり意思表示するとともに、国家として毅然とした態度で臨んでもらいたい。
◎中国政府の野望は果てがない
付加すれば、中国は2030年に米国を抜き世界一のGDP国と軍事大国を目標としている。
このような中国の野望に対し、日本政府が安閑としている場合ではない。現在の対中・対外外交を早急に改め未来に禍根を残さないよう断固とした外交で全世界に臨むことを要求する。
イザ!という時アメリカは日米同盟を守るのか、そのことも断固とした外交なしには危ういといわざるを得ないのだ。だから、沖縄の民家にヘリコプターが墜落した時なぞ小泉首相は南米から急遽帰国し、米国と直接交渉する態度が求められていたことは当然だというべなのだ。