自然環境に関する規定を改憲の際ぜひとも加えよう
平成13年5月15日総本部憲法調査研究委員会
委員長 横山正幸
イギリスの歴史学者アーノルド・トインビーが伊勢の神宮をお参りした時に「西洋は自然破壊を土台にした文化・文明をもったが、日本は自然と融合しながら人間が生きていこうとする文化を培ってきた。もし行き詰まった西洋文明を超克するものがあるとすれば日本の思想だ」と言いました。つまり日本の文明は自然と共生・調和しながら生きてきたという歴史があります。神道においても、自然の織りなす森羅万象を「カミ」と呼び、豊穣をもたらしてくれた「カミ」に感謝し、また荒ぶる「カミ」を畏れ、鎮めました。
しかし、21世紀をむかえ、日本はもとより地球的規模で地球温暖化等、深刻な問題を人類はかかえています。
日本青年社は21世紀をむかえ「自然と共生・環境と調和」をスローガンに掲げました。民族派は日本民族の特色を検証し、そのよき伝統・文化を継承していくという使命をもっています。その日本青年社の中で当委員会の任務は、国家の根本法である憲法について調査・研究することです。現行憲法第9章に改憲条項があるにもかかわらず、ただひたすらに憲法の一言一句を改正することに反対するという何ら法的根拠のない事を主張する勢力があるのも事実です。
ところで、現行憲法の改正条項は、両議院のいずれか一院で総議員の3分の1が反対すれば、永久に憲法改正はできないという非常に厳格な規定をしています。たとえばこの条件を緩和することも憲法改正なのです。そして今日においても憲法改正のために行なわれる国民投票の手続きを定めた制度である国民投票法は制定されていません。まず国会は国民投票法の早急な制定をしなければならないと思います。
日本の民族派団体である日本青年社が「自然と共生・環境と調和」をスローガンに掲げた本年、等委員会としましても、自然環境に関する国民の権利、義務を新たに規定として加えるべきではないかと思います。この規定が入れば憲法を根拠として国や自治体に積極的な環境保護を要求することもできるようになります。案としては「国民は公共の福祉に反しない限り良好な自然環境を享受する権利を有する。国および国民は自然環境を保護し将来の国民にこれを継承できるように努めなければならない」というような文言です。
≪資料≫
- スペイン憲法(第45条1項)
「何人も人格の発展にふさわしい環境を享受する権利を有し、およびこれを保護する義務を負う」
- 自然環境保全法(昭48.4.12施行)
「この法律は自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって、自然環境を保全することが特に必要な区域等の自然環境の適正な保全を総合的に推進することにより、広く国民が自然環境の恵沢を享受するとともに、将来の国民にこれを継承できるようにし、もって現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする」
- 環境基本法(平5.11.19施行)
「地球環境保全が人類共通の課題であると共に、国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であることおよびわが国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることに鑑み、地球環境保全はわが国の能力を生かして、および国際社会においてわが国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない」