医療現場の現状と医療ミス
“厚生労働省は基準看護を見直せ”
平成13 年7月17日
1. 最近重大な医療ミスがたびたび報道されている。医療の進歩は日進月歩に見直されているが、プリミティブ(初歩的)ミスが重大な医療過誤を生じていることが一般的で、悪意なきミスが繰り返されている。
なぜ、現在医療現場でこのようなミスが発生しているのか、患者が安心して入院できる態勢を病院側が構築することは極めて喫緊の課題である。同時に患者の方も、病院側の説明に対し、疑義を訴えインフォームド・コンセント(医療側、患者側が同意、納得すること)を求め、疑義に応えようとしない病院からは退院、通院を止め、しっかりとした病院を選ぶことも大切なことである。
ことは人命に関わることである。そのためにも患者とその家族は病院について選択する自由を持たなくてはなるまい。そのためにも、現在の医療現場を知り、何が欠けているのか、知るべきなのだ。
2. 医療現場で欠けているのは、この現場は医師を頂点としたヒエラルヒー態勢であることと、技術者集団であることから生じる「病院とはサービス産業」であることの欠如である。
先ず第一に「病院はサービス業」であることを自覚することが、病院側、患者側双方が認識することが大切なのだ。つまり工場とは異なり、人間と人間が連携・対立する現場である。
いい換えれば技術を売る人間的現場なのだ。それにしても現在の「病院」に問題が多く山積みしている。一般的に(1)「3時間待ち3分診療」(2)「検査漬け」(3)「薬漬け」が代表的である。
3. 「3時間待ち3分診療」の実体である。
このことを克服するためには(1)病・診連携(2)予約態勢を確立することである。(1)については、患者側に多くの問題を残している。開業医にかかる軽度の病であっても「病院へ」が一般的になっている。このため、外来患者で病院は一杯となり、「3分診療」余儀なくされている。このことの克服のためには「確かな開業医」を選択することと、病院と診療所が密接な「連携」を図ることである。このことと緊急な場合「病院」へ行くことと矛盾するものではない。
つまり緊急型病院は「24時間態勢」で臨んでいるからだ。同時に「診療所」も、患者の病状をしっかり識別して「病診連携」を図ることである。加えて診療所(開業医)は自分が紹介した病院の患者の病状を積極的に知るために、病院に直接・間接に連携を図ることである。
このことを通じて「3分診療」の一部は克服できると同時に、先述した(1)〜(3)は、相当解消されるのだ。病院と診療所(開業医)が同じことを繰り返す時間的・費用的無駄は少なくなるにちがいない。加えて病院側にとっても過剰な労働が解消されるはずだ。この「病院連携」の一部の病院と診療所で進んでいて、患者側もこのような「病院」と「診療所」を選択することも必要なのである。
4. 病院の予約制の確率の問題である。このことは3項で記したことと密接な関係にあることから医療側と患者側双方が積極的に「病診連携」を図らなければならないことである。
5. 一方、病院側(入院病棟)の問題点は看護婦の恒常的な不足から生じる過剰労働だ。病院は交代制勤務であるが、工場のような、あるいは鉄道員のような交代制勤務が確立されていない現状を病院側、厚生労働省は認識し、少人数で臨む深夜勤務を解消しなくてはなるまい。
入院患者の病状は24時間通して変化するが、深夜帯に入ると看護婦は急速に減少する。すなわち、工場では「24時間態勢」で臨んでいるが、病院での「24時間態勢」は極めて変則的である。このことは患者の病状に対応していないことと同じ意味である。病棟の病院側の最大の欠点でもある。それと同時に昼間帯→深夜の申し合わせ事項も深夜の看護婦には負担となり、看護婦間の連携がおろそかになりがちで、このことが初歩的なミスに通じているのだ。病院の深夜態勢の確立を!と私たちは声高に病院、厚生労働省に要求しなくてはなるまい。
このことが解決されることによって医療ミスの50%は解消されるはずだ。深夜、走り回っている看護婦の姿を見るたび、これでは「ダメ」だ、と思うのは、患者側の一方的な思いだろうか。深夜、疲れ切った看護婦が日勤の看護婦に申し合わせをすることをしても人間なのだからミス、口述、記述漏れが生じると病院・厚生労働省は思わないのだろうか。
何度もいうが、病棟は人間の生命を重く預かっているのだ。このことを肝に銘じ、根幹から病棟で働く態勢の再構築を私たちは要求する。
このことは現状の厚生労働省の通達である基準看護制度(特V・特U・特T)の準夜勤、深夜勤の患者数に対する看護婦の数を見直すことが要求されていることである。同時に医師にとっては辛いことだが、当直医の人数も見直すことに通じている。
これらは次回、基準看護制度の現状と改善策を日本青年社は明確にし、医療関係者と国民にアピールすることにする。