いまこそ、国民が誇れる国家の構築が肝要

平成18年 4月10日
霜田有希夫(詳細下記参照)


創 國 論 … 2

帝国通信社・帝国通信ニュース特別解説委員/ 社会問題評論家
霜田有希夫

著者略歴●しもだゆきお/社会問題評論家/四〇年横浜生まれ。六三年明治大学政経学部卒/(財)日本経営者協会チーフコンサルタントを経て、現「中堅企業」連載調査報道シリーズをはじめ、執筆、講演多数/著書「政海解体新書」他/ファーストオリエント企画(株)代表取締役・日本セパタクロー協会理事他

国際戦争の真の敗北とは

 戦争とは国家間の利害対立によって生じるものであり、そこにはどちらが正しく、どちらが間違いであるという明確な理論は存在しないが、それが武力闘争である以上、結果的に勝者と敗者に区分されることになる。

 しかしながら、戦争による真の勝利とは、単に武力を持って相手国を制圧することで成り立つものではなく、相手国に対して勝者の思想、主義を十分に植え付けることによって初めて成り立つものである。

 大東亜戦争後の日本は、武力による敗北以上に、戦勝国の思想、主義の導入を許し、本来日本人が持つ崇高な文化、文明を失ってしまったことにこそ大きな問題点があるといえる。米国は民主主義の美名のもとで、日本の伝統の一つである家庭、家族主義を崩壊し、個人主義中心の思想を導入した。旧ソ連は日本のマスコミ界を中心に共産主義思想の導入を図った。この結果がアンバランスな権利主義、個人主義の蔓延する今日の日本の姿を演出したともいえる。

 この戦勝国思想の導入口にあるものが、極東軍事裁判(通称、東京裁判)である。

 この裁判の狙いの第一は、白人種に刃向った有色人種への制裁であり、第二には、日本人に贖罪意識を植え付ける為の洗脳、加えて、戦勝国思想への従属、第三には、白人種のアジア侵略の歴史を帳消しにすることである。

 連合国のアメリカ、イギリス、オランダなどの多くの国がアジア地域を分割し、植民地化して搾取を繰り返して来た歴史的事実を葬り去り、日本国に侵略の汚名を着せることによって、その批判の矛先を日本へ転嫁させようという目論みである。

 このような戦勝国による敗戦国への制裁以外の何者でもない一方的な裁判の不合理性に対して、一九五二年サンフランシスコ講和条約の発効により独立国となった日本の先人達は、四千万人の署名のもとで、一九五三年八月三日の衆議院本会議で「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が満場一致で採決され、これにより、戦争犯罪人の不存在が明確になったことは、歴史的事実である。

 もとより、戦争とは、国家が交戦権に基づき行なう行為である以上、そこには犯罪という概念はなく、従って戦争犯罪人という呼称すら存在し得ない。

 それにもかかわらず、諸外国が自己の国家利益追求の為に、その外交戦略上、戦犯と言う言語を利用することはまだしも、日本の知識人やマスコミが当然の如く戦犯という語意を用いるところに日本の病弊すら感ずる。

 しかも日本では、戦後、正しい歴史教育すら行なわれていないために、偽りの歴史を信じ、真の日本の姿を認識することなく時代をへることによって、日本人の魂は融け、二千年にわてって先人が育んで来た文化も伝統も水泡に帰そうとしているのである。

 まさに、日本は日本人本来の思想、信条を捨て、ひたすら本当の敗戦国として生きようとしている感がある。


謝罪国家日本では国の誇りは保てない

 確かに戦後の日本は経済的には目覚ましい発展を遂げ、世界有数の経済大国に成りはしたが、他方で心の潤いを失い、文化を失い、家族の絆すら稀薄となり、金銭至上主義の社会を生みだしている。

 そこには武士道精神のかけらも無く、何か日本本来の姿を見失っているように感じられる。

 東京裁判での日本人の贖罪意識の洗脳が功を奏したかの如く、戦後の日本では、政府首脳が各国に対して謝罪外交を行なって来たが、本来、国際社会では国家が他国に謝罪するということは、常識外の愚行である。

 多くの国を植民地化し、侵略、略奪、搾取を欲しいままにして来た西欧諸国が謝罪をしたという歴史的事実は全くなく、それどころか三十五年もの永きにわたりインドネシアを奴隷化してきたオランダにしても、独立戦争で劣勢になり独立を認めざるを得なくなっても賠償請求を行なっている。

 これが国際社会のルールなのである。

 しかるに日本はたえず贖罪意識を披瀝するが故に、そこにつけ込まれて諸外国から謝罪の要求を突きつけられ、マスコミもそれをあおるという実に奇妙な国家となっている。

 これでは国民も国家への誇りを持ち得まい。

 もう一刻の猶予もない。

 国家の尊厳を取り戻し、誇れる国家の構築に邁進しなければ、諸外国から遅れをとることになるだろう。


国益重視の国会論議を

 いま日本がすべきことは、再度日本の正しい歴史を認識し、主張すべきは国際社会にはっきりと主張し、日本の国益を念頭に国家運営を進めて行くことであろう。

 その中心となるべきが国会であるが、耐震偽造、偽メールなどといった国益無視の国会論戦に終始しているようでは二十一世紀の日本は滅亡の道を歩むことになる。

 いまや世界は情報戦の渦中にある中で、陸自、海自の極秘資料が流出たり、中国の人民解放軍傘下の兵器メーカーに対して軍事転用可能な高性能無人ヘリがヤマハ発動機から不正輸出され、加えて事実上の工作資金として中国側から年間三千万円から五千万円の資金が流れていた事実。更には、大手精密機器メーカー「ミツトヨ」による中国、タイ、北朝鮮への核関連機器の不正輸出など国の安全保障の根幹にかかわる重大問題が多々あるにもかかわらず国会は目もくれない。

 軍事予算は世界有数なレベルでありながら、情報戦略では完全に立ち後れ、危機管理意識に疎い国状にもかかわらず、国会はこれら肝心な問題の論戦をさけ、まるでワイドショー化している現状に、はたして国の将来はあるのであろうか。

 誇れる国家の構築、夢と希望に溢れる国家の構築が出来る真の政治家の擡頭を望む。