平成17年4月12日
【京都議定書の骨子】
1.数量目的
●対象ガスの種類及び基準年
・二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素(1990年を基準年)
・HFC、PFC、SF6(1995年を基準年とすることができる)
●吸収源の扱い
・土地利用の変化及び林業セクターにおける1990年以降の植林、再植林及び森林減少に限定。農業土壌、土地利用変化及び林業の詳細な扱いについては、議定書の第1回締約国会合あるいはそれ以降のできるかぎり早い時期に決定。
●約束期間
・第1期は、2008年〜2012年の5年間
●先進国及び市場経済移行国全体の目標
・少なくとも5%削減
●主要各国の削減率(全体を足し合わせると5.2%の削減)
・日本:‐6% 米国:‐7% EU:‐8% カナダ:‐6% ロシア:0% 豪州:+8% NZ:0% ノルウェー:+1%
●次期約束期間への繰り越し(バンキング)
・認める
●次期約束期間からの借り入れ(ボローイング)
・認めない
●共同達成
・欧州共同体などのように複数の国が共同して数量目的を達成することを認める
●排出量取引
・認める。締約国会合において、ガイドライン等を決定する。
●共同実施
・先進国間の実施。
2.途上国の義務の実施の促進
●途上国を含む全締約国の義務として、吸収源による吸収の強化、エネルギー効率の
向上等詳細に例示。
3.クリーン開発メカニズム
●先進国とのプロジェクトにより、途上国の持続可能な成長に資すると共に、右プロジェクトにより生じた温室効果ガス排出の削減を活用することにより、先進国の数量目的達成にも使えることとするもの。
4.資金メカニズム
●条約で規定された資金メカニズム(GEF)が引き続きこの議定書の資金メカニズムであることを確認。
5.発効要件
●議定書を締結した国数が55カ国以上であり、且つ締結した附属書沚曹フ1990年におけるCO2の排出量が同年における附属書沚曹ノよるCO2の総排出量の55%を越えることを発効要件として規定。
*(採択されなかったもの)
●途上国の自発的な参加についての条文は、途上国の反対により最後の段階で削除さ
れ、又、米国が主張していたエボルーションについても見送られた。
本年二月十六日、京都議定書が日本及びヨーロッパ諸国で発効する運びとなった。
以下京都議定書について日本青年社は、「自然と共生 環境と調和」をメインテーマとしていることから、実りあるものとするため断固とした態度で臨む決意である。
二〇〇一年三月に米国が京都議定書からの離脱を表明したことにより、地球温暖化防止に向けた主要国の足並みの乱れが表面化したが、地球温暖化防止には世界的な取り組みが不可欠で、温暖化の原因の多くに責任を持つ先進国の役割は重大だ。取り分け、世界のリーダーを果たして来た米国が離脱するとなれば、地球温暖化防止も形骸化しかねない状況であった。また発効要件である先進国の排出量55%達成にはロシアの批准がカギとなっていたが、昨年十一月にロシアが批准し本年二月十六日の発効となった。
ブッシュ政権が突如としてこの議定書からの離脱を表明したのには、同氏が石油企業関係者であり、加えて石油業界の支援を受け大統領に当選したという背景がある。このため、温暖化や環境といった全世界的な重要課題よりも自己の支持団体の利益を優先したものとして、各国から非難された。また、日本を始めとする多数の国が米国の説得に尽力したものの、現在のところ米国には方針を変更するつもりはないようである。
京都議定書は、一九九三年三月に発効した気侯変動枠組み条約の目的を達成するため一九九七年に京都で開催された第三回締結国会議(COP3)で採択された議定書である。この議定書は、先進国に対し、温室効果ガスを一九九〇年比で、二〇〇八年から五年間で一定数値(日本の場合は6%)を削減することを義務付けしている。また目標を達成するための一つの手段として、いわゆる「京都メカニズム」の枠組みが議定書には盛り込まれている。京都メカニズムは温室効果ガス排出削減のための限界費用が低い国から高い国へ移転することにより、費用対効果の高い排出削減に向けた地球規模の取組を可能にする制度である。京都メカニズムの活用は目標達成に伴う経済への影響を最小限にする上で不可欠であるといえる。
経済産業省は、二〇〇二〜〇四年、二〇〇七年、二〇〇八年以降の三段階に分けて、国内対策を講じてきたが、第一段階では、各業界が策定した自主行動計画の実現を見守ってきた。だが現行の省エネ法の適用では達成できない。これと同時に、二酸化炭素を地中などに貯蔵する新技術のような開発支援、原子力発電の建設推進、高効率給湯器や燃料電池自動車などの技術開発を加速しなければならないだろう。
企業レベルでは、温暖化ガス排出量が割当て枠内に収まるように生産技術や生産設備の改善が実行され、またさらに製品に関しても、例えばハイブリッド・カーや家庭用太陽発電などのような排ガス規制に適合する製品や環境を意識した設備へのシフトがさらに進むものと予想される。ただし、このような全国レベルや企業レベルでの取り組みは非常に大切ながら、家庭やオフィスにおける一人一人の個別意識化も重要である。物を大切に使い、再利用可能なものは最大限活用し、節電・節水・省エネに心がけるというように、日常生活の中で、温暖化防止に留まらず、地球環境を意識した努力が求められる。
最後に、この京都議定書の発効に際して、米国が最大の地球温暖化の要因をつくり出していることから、私たちは米国が早急に態度を改め復帰することを心から望むものである。同時に驚異的な経済発展をなしている中国が、この京都議定書について真摯に受け止め将来参加する決意を表明する事を期待するものである。