平成16年6月10日
ブッシュ大統領は、イラクの暫定統治について提案した。ブッシュ大統領は語る。「イラクの現実は困難であり、混沌とした状況が時にあるかもしれない。が、強い国連連帯とたゆまぬ説得力ある努力があれば、暫定自治は可能であると考える」と。しかし、イラクや国連の現実的な動向を照らしてみて、こうした見解はどれだけの説得力を持つのか我々は疑問に感じる。イラク人虐待が明らかになり、その問題がイラク社会とアメリカ社会に与えた影響は計り知れないものである。あと四〇日もない時間の中で暫定自治が具体化するのは無理があるのではないかと考える。
この時間ではイラクの反米勢力の抵抗が収まる展望は見えてこない。同時に世界は米国と連帯するのかと疑うのが当然だ。こうした早急な提案は具体的にはイラク側には立法、司法、行政や石油の管理等の権利まで渡すのかどうか等重要なことが欠けているため、六月末暫定自治は無謀ではないのかと考えざるを得ない。
イラク情勢は既にブッシュの口癖である「テロリストか味方か」という二分法では対処できないほど複雑である。
反占領活動は、当初米軍の進行を歓迎したシーア派にも広がった。敵として攻撃・解体したスンニ派の幹部やバース党員を、治安に役立つからと復権させたのは米軍であることは明らかだ。このように軸足が定まらない政策に鑑み、六月末暫定自治とは繰り返すが、土台無理というものだ。
今必要なことは、イラクの再建にとって治安が最も重要な課題なのだ。今のままでは国連中心の活動はままならない。実はこのようにイラク情勢は混沌としているのだ。
このジレンマを解くには、ままならない国連中心の再建に米国がその権限を委ねることである。それでなければ、イラクは第二のベトナムか、それ以上の悲劇を生むのではないかと危惧するものだ。
つまり、アメリカの世界一国同時支配は幻想であり、世界六〇億の民は混沌とした時代の中、活路を求めていることを米国は知るべきなのだ。
そこから米国のイラク政策が実を得ることになることをブッシュ政権は知るべきなのだ。