2001年03月14日

  今日、日本経済の危機が叫ばれている。株価の低落、土地の下落は止まることなく、また、輸出も鈍化している。加えて恐慌の前触れとも言えるデフレがつづいている。こうした中で、世界経済を支えているアメリカ経済が危惧されている。ここでは日米経済の動向を中心に論じることにする。

日本の経済動向
【1】

現在の日米経済のリセッション(景気後退)がハードランディングするのがいちばんの問題点である。

1、  ハードランディングあるいはそれ以上の事態になることは、世界的な経済危機(世界恐慌を含む)をはらむことになる。ただ、現状では米国はソフト、ランディングする傾向にあり、米国発世界恐慌という事態の想定はむつかしい。しかし、経済の世界性・グローバル性からいって米国も安閑としている場合でないことは言うまでもない。
2、  米国がソフト・ランディングしたからといって米国を含め日本などアジア世界は経済の後退局面として決着するものであり、輸出主導型経済を基本としている日本、アジア経済は大きな影響を受けることは疑いを入れないことである。
すでに米国経済の一定の後退は日本の経済の減少、投資減退を招いており、日本、アジアの対米輸出の減少も生じている。かてて加えて、先述した株価の大幅な下落は「公的資金投入」を無化しかねないものであり、国民の血税の完全なムダ使いになる可能性がある。同時に日本の経済危機はアジアの危機を惹起しかねないとはいえず、日本発世界恐慌も念頭においておかねばなるまい。加えて森政権が麻痺状態の中、日本の責任は重大だ。といわざるを得ない。



【2】 日本の経済動向
1、 すでに述べたように日本の景気の自力回復を困難な状況に追い込み公的資金つまり国家介入をどのように定めるのか選択肢をむつかしくしている。にもかかわらず、日本のこの間の民間企業の動向は3月決算でかなり改善され黒字決済会社が増加すると言われているが、その実態はリストラ=人件費圧縮によるものである。

こうした中で企業の動向は、
(イ) リストラ=人件費圧縮による経営改善。
(ロ) リストラの内容によってバランス・シート調整(財務体質の改善=借入金の圧縮)に向かっている。
(ハ)

金融機関の不良債権処理はなかなか進まず、加えて株安が銀行を直撃しているため、このことが他の多くの民間会社に多大な影響を与えていることは疑いを入れない。

このため民間企業は積極的な投資の向かう環境にないのだ。加えて雇用不安、可処分所得の減少、さらには年金、老後の不安により個人消費は低迷したまま、流通産業の不安という消費社会の根底を揺るがしている。加えて2年連続デフレという資本主義が最も恐れている恐慌のまえぶれが続いている。

誤解を恐れず大胆に提案すれば「消費産業」への公的資金の投入を!」といっておきたい。

 


【3】総括

 現代資本主義をこの間一貫して支配してきた論理=レーガン・サッチャーリズムはこの10年、米国を好景気に酔わせ新世紀に後退させた。日本ではバブル崩壊と資本主義の苦悶を突きつけた。また、アジア経済の好・不況をも体験させてきた。つまり、市場万能主義、自由競争至上主義の新古典派経済学の功罪が現在見事に露出しているといえるのである。

 日本の自民党Y・K・K、民主党の鳩山・管はこの経済思想に頼っている。


 しかし、経済危機に政治の介入という事態を見れば「世界恐慌」を克服したケインズ経済学は生きているのであり、すでに日本は「日本経済」に対して「国家」が出動するときに来ていることを全国民的に理解しなくてはなるまい。それが世界的任務であると自覚すべきなのだ。言い換えれば、国家が明確な経済政策をもって資本の無政府性に歯止めをかける喫緊な時代に来ているのだ。今こそ民族派が自らの命運をかけ、国家に厳しく要求する重大な任務を背負っていることを自覚すべきだ。


 しかし、こうした重大な事態の中、政府中枢が機能していないのは国民的、世界的に不幸なことなのだ。このことを解消することが国会議員の任務のはずだ。ただ事態を安閑と放置しているときではないのだ。


 つまり、日本を含めアジア経済は、その基礎体力から言って市場万能主義、自由競争というレーガン・サッチャーリズムに代表される新古典経済学はなじまな いのである。

  
 その上、米国については、預貯金ではなく投資を選択する国民性からいって株の下落は世界的危機を招きかねない。

1930年代の恐慌でもアメリカは、これはヨーロッパのできごとだ、と他人事のよう思い、一夜にして国民は資産を失った。


このような点ではアジア世界は異なっている。しかし、株価の下落、デフレと恐慌要因を現在持っている限り、日本が日本経済を立て直すだけでなく、米国も他人事のように考えてはならないのだ。


こうして考えれば右翼・民族派の任務は明らかなことだ!


だが、日本の民族の命運が左右されようとしているとき、絶対、資本の無政府性にかけないことをむねとすべきなのだ。

暗黒の木曜日

1929年10月24日木曜日、ニューヨークのウォール街で起こった株式の大暴落はソ連を除く全世界を大恐慌に巻き込んだ。月日がたつとともに恐慌は深刻となり、全工業部門さらには農業部門にも波及。日本やカナダをはじめ短日月のうちに発展途上国や植民地にまで広がり、資本主義世界全てをおおう大恐慌となった。これは1933年まで4年間も続き、全世界の資本主義国の工業生産の総額は44%も低下、世界貿易は65%も縮小した。倒産は続出し、失業者は欧州で2000万人、世界では5000万人にものぼった。  



恐慌前後の世界と日本

1928年7月■ イタリアでは経済不振のため蔵相が更迭される(ムッソリーニの失政批判の回避策)。公共事業の拡大策へ。
同年7月● 日本では、公債相場が年初より7月上旬まで未曾有の高騰。その後漸落し、9月には暴落。
同年8月■ パリで不戦条約調印、国策の手段としての戦争を放棄(15カ国が署名)。日本では「人民の名に於いて」の一句が政治問題化。
同年10月■

中国では、蒋介石、国民党政府主席に就任。

同年11月■ 米大統領選挙、共和党のフーバー当選。
同年11月● 昭和天皇、即位礼挙行(京都御所・紫宸殿)。昭和天皇の即位礼
同年12月■ 米国で戦後の好況がピークに達し、株価急騰。
同年12月● 日本では為替相場の変動激しく、横浜正金銀行の建値変更92回に及ぶ。
1929年8月●

内務省、全国失業状況調査を初実施(11月、26万8590人と発表)。

同年8月■ 米国で鉄鋼・自動車の生産が低下。
同年10月■ 24日NY株式市場大暴落(暗黒の木曜日、世界恐慌始まる)。29日、同株式市場の過去最高の取引数(1640万株)と合計損失額を記録。
ショック死する者、自殺を図る者が出る。
同年10月● 日本では、米国株式市場の暴落の影響を受け、生糸価格崩落。
1930年1月■ ロンドン会議(海軍軍縮会議)開会。日本全権の若槻礼次郎元首相と財部彪海相らが出席。
同年2月■ 仏領インドシナのイエンバイで反植民地を掲げてベトナム国民党・共産党指導の民兵が武力蜂起、半年後仏軍に鎮圧される。
同年2月■ ジュネーブで国際経済会議開く、関税引き上げ・輸入禁止を抑制する2ヶ年の関税休戦協定に調印。
同年3月● 生糸相場が1916年以来の安値に崩落、市場が混乱する。
同年3月■ 米国で失業者のデモ盛んになる。
同年12月● 日本政府は失業対策公債3400万円発行を決定。
同年12月■ 米国では、60支店・預金者40万人の合衆国銀行閉鎖。この年、米国の銀行1352行が破産。フーバー米大統領が失業対策として要請していた公共建設事業費の支出1億1600万ドルを議会が承認される。
同年12月■ ドイツの失業者400万人を上回る。 
同年12月● 日本では、世界恐慌が日本に波及(昭和恐慌)し不況状態がほぼ32年頃まで続く。物価が前年比18%下落、工業製品との格差拡大。大蔵省預金部は農村救済・失業救済などのため地方資金2億2900万円を融通。