平成12 年08月31日
日本青年社 全環塾
少子高齢化対策委員長 飯田哲也


  これからの、我が日本を展望する上で避けては通れぬ問題として少子高齢化が挙げられる。

 少子高齢化とは、単純に若者が減り老人が増えるという実に単純な現象だが、少子化にいたっては、消費、教育、土地住宅関連等、高齢化にいたっては、年金、社会保障、雇用労働問題等様々な分野に影響を及ぼすと考えられる。

 そのような中、民族派団体である我が日本青年社として、これからの日本の21世紀を展望する上で、何をどのような思索をもって運動に取り組んでいくのかを、考えていきたいと思う。


  我が国日本は第二次世界大戦後、世界では類を見ない経済復興を達成し豊かな社会を迎えた。


●豊かな社会を迎えた要因として

 70年〜80年代、都市基盤をなす、社会的共通資本の施設の向上(上下水道、電力、ガス、廃棄物   処理、小中高校、道路、公園等)国家主導方式によるシビルミニマム水準の充足が上げられる。しかし、90年代では、生活水準の低下ではなく生活水準の上昇の速度の低下を迎え、この上昇速度の低 下が、長寿化と少子化の原因をまねくことになると考えられる。

● 少子化対策「エンゼルプラン」について


 経済企画庁は「平成4年版国民生活白書」の副題を「少子社会の到来、その影響と対応」として、出生率低下に伴う諸問題を本格的に取り上げ、厚生省も「平成5年版厚生白書」を「未来をひらく子どもたちのために子育ての社会的支援を考える」と題して発表した。また、関係省庁連絡会議が1992年6月に「健やかに子供を産み育てる環境づくり」を取りまとめたのを受けて、1994年度予算に「エンゼルプラン・プレリュード」と銘打った子育て支援策がはじめて打ち出された。そして、1994年12月に文部、厚生、労働、建設省4大臣による合意によって「エンゼルプラン」が策定。我国の少子化対策は本格的なスタートを切った。

 「エンゼルプラン」正式には、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」と題されている。

 冒頭で合計出生率が史上最低を記録したこと、少子化による様々な社会経済的悪影響が懸念されることを指摘し、子供自身が健やかに育っていける、安心して子供を産み育てることのできる社会形成が必要であるとの認識を示している。

 その上で、子育てをめぐる様々な制約要因を除去することが国や地方自治体、企業や職場、地方社会の役割で有るとして、子育て支援のための多様な施策を提唱している。(厚生省1996.)

◎ 政策の基本的方向(厚生省1996年度)

(1) 子育てと仕事の両立支援
(2) 家庭における子育て支援
(3) 子育てのための住宅および生活環境の整備
(4) ゆとりある教育の実現と健全育成の推進
(5) 子育てコストの削減

具体的重点施策の7点

1. 仕事と育児との両立のための雇用環境の整備
2. 多様な保育サービスの充実
3. 安心して子供を生み育てることができる母子保険医療体制の充実
4. 住宅および生活環境の整備
5. ゆとりある学校教育の推進と学校外活動、家庭教育の充実
6. 子育てに伴う経済的負担の軽減
7. 子育て支援のための基盤整備

特に重要と思われる雇用環境の整備についてその細目を見ると

1. 育児休業給付の充実など
2. 事業所内託児施設の設置促進など
3. 育児退職者の再就職支援
4. 労働時間の短縮など

 となっており、実に網羅的で余す所がない。それは他の項目についても同様であるが惜
しむらしくはいずれも具体性に欠けている。企業や家庭に委ねる部分が多く、政府として
はそれらの努力を、期待するという以上のことがいえないからである。そこにこのプラン
の限界があるけれども、それは同時に国民の人口行動に直接介入しえないという民主
主義国における家族政策の限界をもしめしている。

人口政策と家族政策の目的の違い

人口政策/生存目的と福祉目的

家族政策/(出産や育児について政府が直接国民の行動に介入することは許されない)人口数や出生数を調整することにあるわけではなく、子供をもつことを望み、それが家族の福祉増進に役立つと考える人口の行動を支援することにある。エンゼルプランはこの位けに値する。

 「エンゼルプラン」はようやく着手したばかりで、まだまだ本腰が入っているとはいいがたい。しかし、人口高齢化の主国は低出生率であり、これを放置すれば、高齢化は進む一方である。高齢化問題に対処する意味においても、社会保障政策における少子化対策の比重をさらに高めていく必要がある。加えて少子高齢化に甘んじていては日本は活
性化するはずもないことは明らかだ。

 多彩な積極的家族政策が成果をあげた好例として、しばしば引き合いに出されるスウェーデンであるが、結局、経済の低迷が財政難を招き、コストの高い家族政策が立ち行かなくなった。これは、手厚い家族政策が出生力の回復を可能にすることを実証したが、同時に有効な政策には豊富な資金が必要であり、資金が不足し制度が後退すれば政策効果も消滅するのだという教訓を残した。

 我が国の社会保障政策も年々充実し、その予算規模も膨らんできたが、そのほとんどは年金・医療関係であり、少子化対策に投じられる予算は微々たるものである、しかし重点政策の多くの部分を企業や家族の努力に委ねている現状では、効果はあまり期待できない。

 将来の超高齢化社会には、想像を絶する財政負担の増大が予想されるが、それは結局国民に転嫁されて、国民負担の増加につながる。国民の負担能力にも限界があるので、高齢化対策に力を入れれば入れるほど、少子化対策にはおろそかになるであろう。


補足
*スウェーデンの家族政策*


 出生促進政策ではなく、子育てと就業の両立を可能にする社会環境の整備に主目的があった。

具体的には以下の三本柱

 
・新保険と呼ばれる有給の出産
・育児休業制度
・児童手当および保育サービス

最近再び急速な出生力の低下

 ホエム=ホエムによれば、1990年代急速に悪化失業率は上昇、特に女性を多く雇用していた、公共部門の縮小は
 大きな痛手を与えた。

  手厚くなる一方だった家族政策は史上初めて大幅な後退 を余儀なくされた。

 育児休業給付も現金児童手当も1995年以降大きく削減され、親の学校訪問休暇制度も1996年には全廃。こうした変化を受けてスウェーデンの出生率は急低下した。

* 総括として*

  少子高齢化についての課題や問題点についてこのように纏めてみた。その中において、少子化対策「エンゼルプラン」の実施に対しての予算の増額の方向で見直し又、日本人がかつて明治、昭和の初期、どこの家庭にもあった卓袱台を囲んだ、一家団欒を過ごせる様な、心のゆとりを持つことの出きる環境を、21世紀の我が日本を担う子供たちのためにも、我々民族派団体日本青年社は、国や地方自治体、企業に対し訴え、より一層この問題に対する取り組み要請を徹底すべく運動を展開して行かなければならないと考える。