平成12年08月03日
総本部時局対策局
●九州・沖縄サミットを開催
IT革命、国連改革で同意。サミット首脳宣言を発表。南北問題解決せず。九州・沖縄サミットは七月十七日の外相会議(宮崎)を皮切りに、二十一日〜二十三日、沖縄名護市で開かれた首脳会談(八カ国+EU代表)は、感染症対策、国連改革、IT(情報技術)革命、朝鮮半島問題で一定の同意を得て、二十三日、サミット首脳宣言を発表して終了した。
●九州・沖縄サミットに対する日本青年社の見解
日本は自主防衛=国防構想を構築せよ!今回のサミットは米軍基地が集中する日本沖縄を軸に開催され、日本が世界の平和、貧困から脱出するためそのイニシアティヴを発揮する絶好のチャンスだったが、場所を提供し、日本の自主防衛=国防構想、政治・外交路線の貧困さを世界にアピールする皮肉な結果として終わった。加えて成果たるものを得ず、欧州VS米国の構造の中で日本、アジアの役割は殆ど成果を得ることができなかった。
そもそも沖縄で首脳会談を開く意味は、現在の日米同盟を日本自ら自主防衛=国防構想を持つことによって日米同盟をヨリ対等なものとし、二十一世紀のアジア平和の発信を日本から世界にメッセージするものではなければ何も沖縄で開く意味はなかったはずだ。
ただ「もてなし首脳会談」なら東京でも京都でも良かったのだ。加えて巨大な米軍基地の存在を世界に発信したのだから、日本政府の防衛・政治・外交路線に自分の国は自分で守る」意思がないことを皮肉なことに世界に知らせてしまったのである。
終わってしまったことをあれこれいってもはじまらない。このサミットを契機に、日本はその存在感を訴えるには何をしなければならないのか、ということである。
それは先にも記述したように自主防衛=国防構想を確立し、それを基本に政治、外交路線を貫くことである。
具体的、大胆にいえば、北東アジア安保から環太平洋安保を構想することである。何の構想もなければ、この間、日本が、中国、韓国、北朝鮮を訪問しても、ロシア・プーチン大統領の一飛びで、「北東アジア」のイニシアを「トンビが油揚げを取った」ような事態になってしまうのである。
我々日本青年社は訴える。 「日本人の意識改革を!」と。
国防意識なしに、あたかも「自衛隊に就職」したと錯覚する者も多い。この今の日本、沖縄サミットを契機に、「米軍基地」の存在意義についても、ヨリ真剣な討論なしには、今後の日本の政治・経済にとってこのことは不可欠だ、といって良い。これが沖縄サミットで学ぶ日本の立場ではないか。このことなしに米国に対し日本は対等に事を運べるのだろうか。
EUが米国に「対等」であることは、「欧米」だからいえるのか。そうではあるまい。各国が「自分の国は自分で守る」意識が徹底しているからだ。
日本、アジアが中国を除いて米国と対等でないのは、その意識が低く、そのイニシアを握るべき日本が「軍事技術」はあっても、国防意識がないからだ。
経済協力の名で世界で抜きんで「マネー」を発展途上国に注ぎこんでいる。こうした中で、戦後五十年経っている今、ものを申す国に日本を改造すべき時が来ている、と日本青年社は考えている。
そのためにも「自主防衛=国防構想」を構築しなくてはなるまい。
中には「日米安保」があるから、といっているが「米軍」が日本を守ってくれるといっていることと同じである。それは米国への「信用」であり、確実なものではな。ヨリ確実にするためにも、日本青年社の主張は誤っているのだろうか。
沖縄サミットは終わった。議長国としては無難だったのかもしれないが、サミットが経済中心〜政治中心に移行する中で、同時に世界がグローバル化するとともにブロック化を強める中で日本の「政治革命」=「意識改革」は緊急なことである。
●首脳宣言の骨格
九州・沖縄サミットで二十三日採択された首脳宣言の骨子は以下の通りである。・開発途上国や非政府組織(NGO)との連携を強化する
・安保理を含む国連改革が不可欠だ
・情報技術(IT)の格差解消に専門部会を設置する
・重債務貧困国の多くが軍事的衝突で受ける影響を憂慮する
・感染症対策に関する国際会議を今秋、日本で開催する
・世界貿易機関(WTO)新ラウンドの年内立ち上げに向け努力する
・遺伝子組換え食品の安全性に関する国際機関の作業を加速する
・遺伝子関連で、均衡のとれた知的所有権保護が必要である
・ロシアの余剰プルトニウム処分の資金調達計画を検討する
・ミサイルの拡散抑制のため、多国間措置を検討する
●サミットを終えて
九州・沖縄サミットは成果たるものを得ず終わった。今、私たちに喫緊に突きつけられた問題がある。それは「日本型年功序列賃金」である。
この賃金体系の良さは、会社への忠誠心を強くするだけでなく、目上の人、ひいては親に対する尊敬の念を生み出す、ということである。これが、アングロサクソン、米、英のレーガンサッチャーリズム(新古典派経済学=新自由主義)によって強烈な競争原理でもって日本の一部産業で取り入れられ、能力一本主義が唱えられている。
果たしてこうしたことが我が日本、ひいてはアジア世界に「アジア的世界」を破壊することにならないか、私たちは危惧するのである。「二宮尊徳」を例に出すまでもなく、アジア世界は、目上の人、親をはねのけて「金銭」を収受することを戒めているからである。
今、世界はグローバル化するとともにブロック化する傾向にある。その典型がヨーロッパ大陸(=EU)とアメリカの対立である。
EUはアメリカの軍事方針(軍拡)を批判し、NATOから米軍を追い出し、ロシアを迎え入れ、独自のNATO軍を持つ方針を持っている。
その中で、日本はアジアの一員でありながらアメリカに「NO」を言えず、米国第五十二州と揶揄されている。そして「新自由主義」「競争原理」がより強調され、年功序列賃金体系の破壊が進んでいる。
日本的、アジア的な良さは、能力あるものが、目上の人、親等に対し謙遜して「能力があるから当然だ」といわなかったことにもある。日本的・アジア的世界の破壊は秩序の破壊として、若者を一番最初に直撃する。この間の少年犯罪の異常さをこの視点から見ると「感得」することもできる。
サミットの終焉が語られている今、私たち日本人はアジアの一員であることに覚醒する時にきているのではないか、と日本青年社は考えている。