平成12年07月10日
総本部編集委員会
日本の右翼は本来、その源流を「日本的ロマンチズム」に求めることができる。
戦後、その「日本的ロマンチズム」を希求した代表として三島由紀夫がいる。 戦前には2・26事件で処刑された北一輝、文学者では保田與重郎がいる。
こうした「日本的ロマンチズム」はこの千年、日本人の心を捉えていた、といっても過言ではない。
今回、朝日新聞が募集した「この1000年『日本の文学者』読者人気投票」の結果にも如実に表現されている。
1位:夏目漱石、2位:紫式部が3位以下に大差をつけた結果となっている。
先ず、夏目漱石といえば「我輩は猫である」「坊ちゃん」で日本人には滅多にないウイットを描くと同時に、「猫」をしてその家族を描くといったユニークな表現を初期に発表した。
そして晩年には「草枕」で非人情を描き、未完の「明暗」では人間の虚栄心・利己主義を表現した。これらは、封建制社会〜近代化に至る日本人の葛藤を描くとともに、近代化の病巣をえぐりだしたものである。それは私生活の「妻」との関係でも「金銭」ばかり要求する妻に対する怒りにも表現されている。加えて、優れた文芸評論家である昨年自死した江藤淳、左翼的評論家の代表の一人である柄 谷行人は、近代文学を研究すると「夏目漱石」につきあたる、と奇しくも同じ発言をしている。このことだけでも夏目漱石の偉大さがわかるといってもよいだろう。
次に紫式部だが、彼女の源氏物語は、平安中期の長編物語であり、日本最初の「小説」ともいえる。
内容は「宮廷生活を中心にして、平安前・中期の世相を描写」し、主人公光源氏中心に幾多の才媛を配し、その華やかな生涯を描いている。この小説は世界的名作の一つであり、長編、登場人物の膨大さからここでは逐次批評することはできないが、平安時代の宮廷生活は「自由奔放」であったこと私たちに示している。建造物に「日本的ロマンチズム」は多々あるが小説として、実像としての「宮廷生活」の日本的ロマンチズムは源氏物語で極まっている、と断言しても良いであろう。加えて当時「もののあはれ」が表現され「ロマンチズム」の内容が豊富化されたといえよう。こうしたことは、日本民族の伝統が源氏物語が書かれた平安時代にほぼ完成した、ともいいかえることができることになる。
※
私たち日本青年社は「右翼民族派改革元年」として今年を位置づけている。戦前・戦中・戦後の「右翼」の有り様をしっかりと統括し、諸分野から見た「右翼」の指針の糧とすべきだ、と私たちは考える。
とりわけ、先にも書いた北一輝、保田與重郎の研究は喫緊の課題だ、と考えるとともに、「日本的ロマンチズム」と「右翼」の存在は密接な関係にあり、「右翼民族派」を実りあるものとして、21世紀に大きく羽ばたく決意であることを機関紙「青年戦士」編集委員会はここに表明する。
※文学者の読者投票に選ばれた1位の夏目漱石は現在、千円札に採用されており、2位の紫式部の肖像は源氏物語絵巻の一場面が7月19日発行の二千円札に採用されております。