―ODAの疑惑を衝く―(2)
日本の企業へ環流する「開発投融資」
平成14年1月11日
ODAでありながら、日本企業が供給を受けるという奇妙な「開発投融資」-----。
我が国からODA(政府開発援助)を受けている被援助国は、資本主義国であれ、社会主義であれ、そのいずれもが「開発途上国」であるということ。
この「開発途上国」とは「日本の官庁や金融機関が、カントリーリスクの高い国」と評価していて、「大半が植民地であり、国民には愚民政策をとり、富裕特権階級がいる国」で、「民族意識はあっても国家意識に乏しい国で、政治家を信用していない国」。
また「社会的基盤づくりが遅れていて、文育、病死、出生率が高く、人材、貧困、飢餓を訴える国々」であり「我が国の大企業が、ODAというリスクの少ない仕事のできる国々」といえるだろう。
このODAに関する我が国の政府機関の内容、制度、手続きなどが、援助する側の我が国の大企業に、そのほとんどが還元されるように仕組まれている実態を見るとき、これが援助といえるかどうか疑問を抱かざるを得ないのである。
ところが我が国の担当官庁は「要請主義」、「単発、及び単年度主義」と言い逃れ、援助対象国に大化学工場、大型発電所(ダムも含め)大病院など、次々と不釣合いなプロジェクトを実施してきた。
ODAには「無償供与」と円借款などによる「有償供与」があり、その他に「開発投融資」と耳慣れない制度がある。この「開発投融資」は「円借款」を担当しているJBIC(国際協力銀行)が実施機関だが、この融資を受けるのが開発途上国でなく、日本企業だという。
ODAとは開発途上国を援助するものである筈なのに、日本企業を援助する制度だというのだから不可解である。
「途上国の開発に必要な事業を対象に融資する」という注釈がつけられているが、要するに「日本企業のためではあるが、途上国のためにもなる」という訳だ。
具体例として、パプアニューギニアの熱帯林伐採の場合を述べてみよう。
パプアニューギニアはオーストラリアの北側にある。第2次大戦中のラバウルには、10万の日本軍が駐留し、米軍とオーストラリア軍の分断を図った。
戦後再び日本はこの地に足を踏み入れ、「援助」の名のもとに広範な熱帯雨林の伐採を行ってきた。
このパプアで熱帯林伐採をしている日本企業は「オープンベイ・テインバー社(晃和木材)の子会社」と「ステティンベイ・ランバー社」(「日商岩井」とパプアの政府との合併会社)。そして「ジャパン・アンド・ニューギニア・ティンバーズ社=JANT社」(「本州製紙の子会社)の3社である。
「JANT社」は丸太でなく、伐採した木材を細かく砕いてチップにして輸出し、他の2社は木を選んで切る間伐。したがって「JANT社」はどの木を切ってもいい、ということで皆伐をし、その結果、森は丸裸になってしまう。
これらの3社が、いずれもODAの「開発投融資」を受けていてニューギニアの道路、植林、学校建設などを行っている。
ニューギニアの住民のために道路をつくる、といっても森に住んでいる住民に、車の通るような道路は必要ない。日本企業が熱帯林を伐採するために道路が必要なのである。また、「植林するための道路」というのが、新たに原生林伐採しようとすると住民の反対が強いので、仕方なしにすでに伐採した土地に、成長の早いユーカリやアカシヤを植えようというもので、そのために資金が必要になる。
また学校建設は、明らかに住民への懐柔策である。
「森を切りますよ。その代わりにアメをあげますよ」という意味なのである。
こうした日本企業の営利目的のための、自然の破壊者達のために「開発投融資」というODAが使われている。
この「開発投融資」の実施機関であるJBIC(開発協力銀行)の融資や出資には問題が多く、平成8年には中国広東のうなぎ養殖業者である「日盛産業」という会社に融資した10億円がサギにあったようなもので、1円の回収も不可能になっている。
こうしたODAの「開発投融資」のズサンな供与は、次号で紹介する上海の「森ビル」建設に顕著である。