主権回復の意味と民主主義
否定されてきた日本人の国家意識を取り戻す
四月二十八日を考える

平成二十九年四月三十日(日)靖国会館全国代表者役員会議 於

 一昨日は四月二十八日でした。終戦記念日の八月十五日は知っていても、この日が何の日か、知らない日本人が多いようです。しかし日本が独立国家として
生きていくためには、この日が非常に重要なのです。なぜ重要なのか、それには少し歴史を振り返る必要があります。

 昭和十六年十二月八日、日本はハワイの真珠湾を攻撃しました。それをアメリカは、日本の騙し討ちであると言いました。しかし『フーバー大統領の回想録』(ア
メリカ合衆国第三十一代大統領)によれば、日米開戦は、大統領であったルーズヴェルト(アメリカ合衆国第三十代大統領)がそのように日本を追い込んだ結果
だと書いています。ここで大事なことは、自国の利益のために相手を騙し、脅し、時にはすり寄って何でもやるのというのが世界の常識だというこ とです。現代の
中国や北朝鮮をみればそれが良くわかります。だから自国を守るためには、自国の守りを強化し、さらには共通意識を持つ国と同盟を結ぶ必要があるのです。

 日本は本土決戦となる前にポツダム宣言を受諾しました。それが昭和二十年八月十五日の終戦記念日です。そして敗戦した日本は、戦勝国(連合国)の支配
下に置かれました。その指揮をとったのが、連合国軍最高司令官のマッカーサーです。

 東京裁判では、白人の悪行を棚に上げ、日本はアジアを侵略し住民を虐殺したなどの嘘をでっち上げ、様々な方法で日本を徹底的に悪者にしたてあげました。
その約六年後の昭和二十六年九月八日、日本は連合国(当時四十八ヵ国)とサンフランシスコ講和条約(平和条約)を結んだことで、占領軍による日本の支配は
終り、日本の主権回復が決まったのです。

その条約は昭和二十七年四月二十八日に発効、日本が独自で国家の運営ができるようになったという重要な意味を持つ記念日なのです。

●「日本人の長所、美点」
 ここに面白いデータがあります。木村将人著『日本再生への道 この国の未来に光を見て』(五曜書房)の中で紹介されている「日本人の長所、美点」です。
その一、 日本人は非常に「愛国心」の篤い国民である。国を愛する度合いは、自分の家族よりも、時には、自分自身の命よりも優先する国民である。
その二、 日本人は格式を重んじ、年功序列を尊び、長幼の序を重んじ、先輩後輩の礼儀を大切にする国民である。男性は男らしさを旨とし、勇猛果敢であり、
      女性はしとやかで、きわめて謙虚で、しかも、したたかな強さを秘めている。
その三、 お金に関しては淡泊で、執着しない国民である。お金よりも大切なものが、この世の中に数えきれないほどあるということを、全ての国民が当然の如く
      認識している。
その四、 不自由さを苦にしない稀有な国民である。「公私」「公」を優先し、自分より先に相手を思い、そのために生じる不自由さは甘んじて受ける国民である。
その五、 礼儀作法を重んじ、潔く、武士道精神に代表されるように、世界でも稀有な道徳心の篤い国民である。
その六、 気力が充実し、精神力抜群である。
その七、 己の信念のためならば死をも恐れぬ、たくましい精神力の持ち主である。
その八、 老若男女全ての国民は義理人情に篤く、隣人の世話や困っている人への物心出面からの援助は至極当然のことと生活している。
その九、 国民一人ひとりに計画性があり、将来を見据えた生活設計をしっかり立てて生活している国民である。
その十、 日本人としての誇りが高いばかりでなく、他国の人間に対しても、戦争した相手国の捕虜に対してさえ、礼儀を重んじる国民である。
その十一、 享楽を恥とし、刻苦勉励を推奨している。
その十二、 男女の交際に対しては厳しく、結婚の相手を決めるには、いくつもの関門を設けている。男性も女性もそれを素直に受けとめている。
その十三、 先祖を敬い、老人をいたわり、親、子、孫、親戚等々、一族の団結を大切にしていて、「家族」というものの理想的な姿を現出している、世界にも例のな
        いすばらしい国民である。
その十四、 神代の昔から連綿と続く日本民族の歴史を誇りにし、日々の生活の支えとしている。

●独立国家としての主権を回復する
 実は、これを調査したのは、日本を支配するためにやってきた占領軍なのです。大東亜戦争で戦った日本軍があまりにも強かったので、徹底して日本を弱体化し
再び日本人が立ち上がらないように占領政策を進めるためでした。

 そこから導き出された答えが、愛国心を消滅させる、悪平等をはびこらせる、自由を過度に追求させる、道徳を軽視する、3S政策を広める、義理人情を抹殺させる
国粋主義を否定させる、享楽主義を広める、家族制度を破壊させる、民族の歴史を否定させる……などです。これが占領政策の柱になりました。今も変わらぬ日本
国憲法と安倍第一次内閣で改正された教育基本法がその代表例です。

 さて日本は、昭和二十七年四月二十八日に主権を回復しました。独立国家として主権を回復したとなれば、当然ながら日本が守り続けてきた国体や伝統、文化、
歴史などの継承が主権回復の基本でなければなりません。

ところが、現在の国会議論や一部マスコミを除く論調を聞いていると、まるで占領政策の延長です。日本の主権回復になっていなません。今年は主権回復してちょ
うど六十五年になります。四月二十八日を「主権回復の日」として強く意識し、日本の国家主権を取り戻す必要があります。その具体的な内容が「日本人の長所、美
点」というのは、まさに歴史の皮肉です。(因みに「日本人の長所、美点」は、モルデカイ・モーゼ著『日本人に謝りたい―あるユダヤ人の懴悔』(日新報道)の中より
抜粋要約したものなのです)

●日本人には国家を支える共通意識があった
 四月二十八日と同じように大事な意味が失われているのに民主主義があります。民主主義は戦後日本に導入され平和な国日本になったというような言い方が
ありますが。果たしてそうなのでしょうか。左翼陣営は、民主主義を盾に、民主(民が主となる主権在民思想)のみを強調し日本国家解体に励んでいますが、日本
本来の民主主義は、そんな薄っぺらなものではありません。

●天の岩屋戸
 日本の神話の中に天(あめ)の岩屋戸(いわやと)の話があります。天照大御神は、弟の神である素戔鳴命(すさのおのみこと)が暴れたことで天の岩屋戸に姿を
隠して閉じこもり、世界が真っ暗になってしまった。そこで八百万の神々が天の岩屋戸の前に集り、どうしたら天照大御神に出てきてもらえるかを神謀(かんばか)り
ました。かがり火を焚き天鈿女命(あめのうずめのみこと)が裸で踊りだすという場面がありますが、それによって天照大御神が半身を乗り出し、天手力男神(あめの
たぢからおのかみ)が岩戸を開いて世が明るくなるという話です。八百万の神々が、みんなで話し合って問題を解決しているのです。

●聖徳太子の憲法十七条
 推古十二年(西暦六〇四年)、聖徳太子は十七条の憲法を発布しています。一条の「和を以(もっ)て貴(とうとし)となし」は有名です。最後の十七条には「重要な
ことを、ひとりで決めてはならない。全員で、良く相談しなさい」と書いてあるように。民の意見を大切にしていることがわかります。
みんなで話し合い、民の意見を聞くというのは民主主義の基本です。ただ、それのみでは話し合いがまとまるとは限りません。エゴがぶつかり合うからです。
では、なぜ日本は、それでうまくやってこられたのでしょうか。その答えが大石久和著『国土が日本人の謎を解く』(産経新聞出版)の中にありますので、その概略を
紹介します。

●日本列島は、ヨーロッパや中国などのような大陸と違って急峻な山からすぐ海という国土で、人が住める場所が限られ、縄文時代から江戸時代まで一万数千年の
間、小さなムラが各地に分散していた。

●また日本列島は昔から災害列島で、災害から村の生活を守るためにみんなが助け合い分かち合って生活してきた。それは、ムラびと一人一人が大事にされる社
会であった。

●人々は、自分の利益のために行動するのではなく、ムラ(共同体)全体の利益のために貢献する生き方こそ、本当に幸せな生き方であることを実感しながら歴史
を刻んできたのである。その過程で独自の「和の文化」が生まれ、日本人のDNAとなってきた。
 そう、日本民族は長い時間をかけて、共同体を守り、支えることが培われてきました。それが根底にあるからこそ、話し合いでも意見を出し合っても、うまくまとまっ
てきたのです。戦後教育によって否定されてきた共同体意識、国家意識が、国民の共通意識としてあったということです。日本国家は、民を大切に
しながら、民もまた国を大事にしてきました。それが日本本来の民主主義です。


 日本青年社がスローガンに掲げる「倫理・道徳・品格の向上」の目指すところは、正に日本本来の民主主義を取り戻し、真に日本の主権を回復することと同
じではないでしょうか。 以上