抗 議 文 (公開)
※原文は縦書き平成20年3月27日
JOC・日本オリンピック委員会は・日本の安全と、国際情勢に鑑みて「北京オリンピック」参加を見直すべきである。
貴殿は、近代オリンピズム生みの親であるクーベルタン男爵の崇高の精神と理想を掲げる、日本オリンピック委員会(以下、JOCという)会長として、本年八月に開催を予定している「北京オリンピック」向けて日々御精励なされていることと拝察する。
又、オリンピック憲章には、「競技者が、いかなるかたちにおいても、政治的あるいは商業的に悪用されることに反対する」と謳われていることは理解しているが、この度のチベット騒乱を見る限り、中共で開催される「北京オリンピック」に日本は参加すべきでないと思料致すところである。
扨、本年三月十日に端を発した、中国のチベット自治区ラサの騒乱は、その後、チベット自治区にとどまることなく、大きなうねりとなって他の少数民族自治区に拡大していることは周知である。我々の調査に依れば、この原因は、北京オリンピックを目前に控えた中共政府が、オリンピック開催中に起こる可能性の高い、政府に向けた少数民族の独立を訴える抗議行動を事前に封じ込めるために、何の武器も持たないチベットの僧侶を中心とした民主的なデモ活動に対して、計画的に武装警官・軍隊を出動させ挑発し、騒乱が恰もチベット族から起こったかのように騒乱の視点を摩り替えたのが事実のようである。最もこれは、中国が使ういつもながらの手口であるが、現地の状況を把握できない日本のメディアは、当初、中共が流す意図的な情報を、そのまま報道する内容が多く見られたが、日が経つにつれて、西側の報道や、チベットを訪れていた日本人観光客の証言と写真を知ることに依って報道内容を変え、この度の騒乱が、中共の人権弾圧に塗炭の苦しみにあえいでいた少数民族が、自主独立の意思を国際社会に訴えることを目的とした抗議デモに対する中共政府の武力弾圧が引き金になったことを伝えているが、我々はこの度の騒乱は、中共政府が言うような短時間で終結すると考るにはあまりに無理があると考えざるを得ない。仮に中共の思惑通り、この度の騒乱が早期に解決されたとするならば、それは中共の残虐な歴史が物語るように、少数民族に対する人権弾圧と恐怖政治で少数民族の叫びを封じ込めて全ての問題を闇に葬り去ったということだろう。
依って、我々は左記の理由により、JOCが推進する「北京オリンピック」参加は、断固として見直すべきであると抗議申し上げる次第である。
一、我々は、人権なき中国共産党独裁国家、中国に平和に祭典「オリンピック」を開催する資格はないと断じる。
二、貴殿が、JOC会長として、日本選手団を中共に派遣するということは、貴殿は競技者全ての生命を預かるという重大な使命を担うことになるが、貴殿は日本選手団一人ひとりの生命と、オリンピックを観戦するために訪中するであろう数百万人の日本人観光客の生命の安全を守ることができるという保証がない。
三、中国の大気汚染度は、人体に大きな被害を及ぼすと可能性が高いという。海外の一部選手には、この大気汚染を恐れてオリンピック出場を辞退するものも出ているが、貴殿は、日本人選手が、この大気汚染によって被る被害に責任を持つことはできない。
四、オリンピックの根本原則には、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェア・プレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行われるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある、と記されているが、中国で開催されたスポーツ競技の過去の例から見て、少なくともフェア・プレーの精神を期待することはできない。従って競技中及び競技判定にも、想像に絶する事態が起きうることが十分予測できる。
五、貴殿は、わが国における中国の外交姿勢がいかに理不尽であり高圧的であるかご存知であろうか、この問題はわが国政府にも重大な責任があることだが、この高圧的な外交姿勢が、中国において日本人に向けられる差別行為に繋がる危険性がある。
最後とするが、貴殿は、一九四九年、中華人民共和国建国後の「文化大革命」をご存知か、一九八九年、民主化を求める市民や学生を凄惨な武力弾圧した天安門事件をご存知か、同時期に起こったチベットが独立を訴えた抗議に対して、現在の国家主席・胡錦檮が、武力弾圧と戒厳令を駆使して抗議を封じ込めた残忍極まりない暴挙はご存知か、これらの例に照らし合わせても、この度の少数民族自治区に拡大している独立運動と、中国の武力弾圧が如何様なものであるかしっかりと認識し、経済至上主義に走る財界首脳や、親中派内閣の圧力の屈することなく、世界人類の平和のために北京オリンピック参加を見直し、且つIOC(国際オリンピック委員会)に北京オリンピック開催中止を強く要請することを要求する。
右、公開抗議文とする。
平成二十年三月二十五日
日本青年社 国際局
局 長 澤 井 和 美
東京都港区六本木三―三―十八
日本青年社会館
財団法人
日本オリンピック委員会
会 長 武 田 恆 和 殿